行政とデジタル

2019年の年末頃、世界中がコロナ禍に陥りました。
感染を防ぐため、人との接触の機会をできるだけ少なくする流れの中、社会で着目されたのがいわゆる「デジタル」という手段でした。
民間のみならず行政においてもこれは同様です。
本ページでは行政とデジタルの関係について記していきます。

1.情報伝達の歴史

人は一人では生きていけず、社会性をもつ生物です。
太古の昔から人類は他者とコミュニケーションを取ってきました。
おそらく最初は他者の視線や動作、声などだったでしょう。
人類が進化するにつれ、声に意味を持たせた「言葉」が生まれていきました。
言葉を石板などに残すために「文字」が生まれました。遠くの他者と情報交換するために「手紙」を送るようになりました。
手紙ではやり取りに時間がかかるため、「電話」によって即時のやり取りができるようになりました。
そして現在、声だけでなく様々なものが即時にやり取りできる「インターネット」が普及し、技術革新の中でやり取りできるものが増えていきました。
そのため、中山間地でもいろんなことができるようになり、場所・時間といった様々な障害を乗りえることができます。

2.コンピューターとデジタル

インターネットはコンピューターを操作することで接続できます。
コンピューターの名前は “compute:計算する” から来ており、その由来のとおり計算する物(者)です。
文房具のひとつである計算尺もごく単純なコンピューターと言ってもよいでしょう。
コンピューターは進化し、現在ではPC(パソコン)のみならず、多くの方が使っているスマートフォンといった携帯できるコンピューターが主流となっています。
その現代のコンピューターはデジタル形式の情報を扱います。
デジタルとは “digital:離散的” という意味です。(ちなみに、反対の意味として扱われるアナログは “analog:連続的” という意味です。)
これは時計をイメージするとわかりやすいです。
デジタル時計では60段階の秒・分、12段階の時間しか表せませんが、アナログ時計は段階数に限りはありません。
ちなみに、コンピューターで扱うデジタルデータは2進数で表現されます。
私たちが日常で使っている10進数は0~9の組み合わせ、数を1ずつ増やしたときに9の次は桁が1つ上がって10になります。
2進数は0と1の組み合わせです。
1+1=10です。
2進数で表現するのはコンピューターの構成上、都合がよいのです。
2進数だと、構成している部品に電圧がかかっている(1)かいないか(0)の2通りで表すことができます。
その部品が大量に組み合わされてコンピューターが出来上がっています。
他にも磁気ディスク等では磁気の向き、原始的な紙のカードなどでは穴が開いているかいないかなど、2パターンになるものはなんでもデジタルデータに置き換えることができます。

3.コンピューター・デジタルの特徴

コンピューターは機械なので「間違えることなく」「疲れない(時にメンテナンスは必要ですが)」が特徴で、技術の進歩によって「超高速」で計算することができます。(ここで「計算」は「情報を処理」と言い換えても構いません)
コンピューターは指示(入力)に忠実に計算しますが、指示が間違っていると当然答え(出力)も間違えます。
また、デジタルデータは0と1で表されるため、データの複製のエラーの確率が小さくできます。(0.5や0.3333など中間の値は存在せず、0か1のどちらかになるため)
これはメリットでもあり、デメリットでもあります。(簡単に複製できる)
さらに、デジタルデータにすることで保存する場所が相当節約できます。
例えば、ノートパソコン (1.0TBとする) が保存できる書類の量は、文庫本 (1冊100MBとする) 1万冊分です。
デジタル化に対しては、このような特徴を活用していくことが必要です。

4.これからのデジタルを活用した行政

どこをデジタル化していくのか。
大別して2つあります。
それは、①住民―行政間、②行政内部、です。
本来であれば、②があって①があるわけですが、日本においては急速にデジタル化の流れが来てしまったため②も追いついていません。
住民から受け取ったデジタルの申請が行政内部ではアナログ(紙)で処理されることもあります。
②において進めなければいけないことは、不要な押印を無くすなど紙を使わずに業務を進められるようにすることや、行政が保有している情報のデータベース化を進めていくこと、今までのアナログベースの情報をデジタルベースの情報に更新していくこと、ルーチンワークを自動化することなどです。
①においては、インターネットを通じたオンラインによる申請手続きや相談なのができる環境を整えることがありますが、私はここで行政側においてやらなければならないことがあると考えています。
それは、デジタル端末を扱うことに不慣れな方々に対し、どのように行政サービスを提供していくかということです。
さらに、デジタル端末を扱うことに抵抗のない方々でも扱いづらい行政のシステムが多く存在します。
行政側は、今まで申請用紙に特段の理由もなく住民に書かせていたような項目などを排除するなど住民側の立場にたち、行政とのやり取りがどうすればスムーズになるかといった業務手続きの流れを見直すところから始める必要があります(行政のDX:デジタルトランスフォーメーション)。

2022年の12月議会におきまして、私に一般質問の機会がありました。
最後にその質問と答弁を掲載します。


【質問】
ある住民が何らかの行政サービスを受けようとする際、その住民は自ら適した制度を探し、行政に利用の申請を行うが、住民が期待している行政サービスまでたどり着くには未だに困難なケースもある。これは、行政サービスの広報など申請以前の問題である。
また、新型コロナウイルス感染拡大防止協力金申請は、コロナ禍により電子申請が可能となったが、電子申請に不慣れな方が飲食店等を営んでいる場合も多かったことは記憶に新しい。これは、行政サービスへの申請方法の問題である。
さらに、被災時の応急住宅への入居では、入居の申込みの他に罹災証明書が必要だが、南海トラフ地震が起きた際には多くの被災者に罹災証明書の提出を求めるのか。行政として、県民の目線に立ち、対応していくべきであると考える。これは、行政サービスへの申請そのものの在り方の問題である。
個人的には、デジタルを活用することで、情報端末に触れる必要がなくなることがDXの考え方の一つだと思っている。
これらから、添付書類などを減らす申請手続の簡略化に加え、そもそも申請そのものが必要であるかを検討し、申請自体をスキップできてしまうことが特に命や生活に関わる行政サービスの利用には求められるのではないか。
そこで、県民の利便性向上とともに申請手続の見直し等に向け、県はこれからの行政サービス提供の在り方についてどのように考えるのか所見を伺う。


【答弁(経営管理部長)】
県民の皆様のニーズに沿った利便性の高い行政サービスを提供していくためには、業務の様々な場面でデジタル技術を活用するとともに、行政サービス提供の端緒となる申請手続自体も見直していくことが重要であると認識している。
このため、県では、県民の皆様が、行政サービスの申請を簡便に行えるよう、申請手続のオンライン化の推進に併せ、各種申請書への押印廃止や添付書類の削減等を進めている。
一方、国や他自治体においては、一人ひとりに合ったお知らせをスマートフォン等に表示するプッシュ型の情報提供や、各所属で保有する情報を統合し活用するワンストップサービスの実施といった先駆的な取組のほか、浸水の危険性がある地域の状況をリアルタイムで把握できるセンサーを設置し、災害時の早期対応や罹災証明の簡素化・迅速化に向けた実証実験を行うなど、新たな動きが出てきている。
県としては、こうした先進的な取組にも注視しつつ、例えば、職員が窓口で必要事項を聞き取り、県民に代わってシステムに入力する「書かない窓口」や、出先機関の窓口と担当部署を遠隔でつなぎ、身近な窓口でも相談等の対応が可能となる「リモート窓口」の導入など、提供するサービスの種類や状況に応じ、必要なサービスが必要とされる方へ適時・適切に届けられる行政サービス提供の在り方について検討していく。

2023年3月23日