調査

ふじのくに県民クラブ・エネルギー研修会 (2019/7/9)

碧南火力発電所

会派でエネルギーに関連する施設の視察に行ってきました。エネルギー政策は県民の皆様の豊かな生活を支える重要なものです。

視察した施設は「JERA碧南火力発電所」と「中部電力技術開発本部」の2か所。

以下、レポートです。


  1. JERA碧南火力発電所
    株式会社JERAは東京電力フュエル&パワー株式会社 (50%)・中部電力 (50%)の出資で設立されている。JERAは国内25か所の火力発電所を運営しており、また海外でも発電所運営等の事業を進めている。
    日本のエネルギー自給率は2017年度において9.5%である。エネルギー資源を他国に依存しなくてはならず、安定したエネルギー供給を図るために様々な資源で発電する必要がある(エネルギーミックス)。
    JERAは碧南火力発電所等の火力発電所を運営しており、この碧南火力発電所は石炭火力としては国内最大410万kWの出力で愛知県の半分のエネルギーを賄うことができる。
    火力発電はCO2またNOx, SOx,などの廃棄物等のデメリットが存在するが、発電量の調整のしやすさや石炭であればコストが安い等のメリットも存在する。現在、太陽光発電が普及し昼間の発電量を大きく占めるようになったが夜間は発電できないため、ローコストで大規模な蓄電ができない現技術力においては発電量の調整がしやすいメリットは大きい。
    石炭火力発電所は発電部分だけではなく石炭の貯蔵・廃棄物の処理も必要なため広大な敷地が必要となり、碧南火力発電所においては名古屋ドーム40個分の敷地を持つ。碧南火力発電所貯炭エリアの石炭は全部輸入したもの(オーストラリア・インドネシアで80%)であり、1ヶ月分を貯蔵可能である。この貯炭エリアの石炭は粉末状にされてコンベアーでボイラー建屋に送られて発電に使用される。この際に排出されるばい煙・ばい塵は技術開発により少なく抑えられている。燃焼された灰の86%はセメント等に再利用される。
    今の社会は電気エネルギーなくしては成り立たず、今後の自動車EV化の流れからも電気エネルギーの重要性は高まる。
    再生可能エネルギーによる発電は環境負荷が小さいとメリットの反面、安定供給という面でデメリットも抱えている。
    電力の安定供給という面で現技術力においては未だ火力発電に頼らざるを得ない。火力発電における環境負荷の低減、または新技術による発電方式の開発を進めていかなければならない。
  2. 中部電力技術開発本部
    中部電力技術開発本部では原子力の安全性向上のための「原子力安全技術研究」・電力安定供給のための「電力技術研究」・顧客のエネルギー利用技術の「エネルギー応用研究」等、また静岡大・静岡県立大・名古屋大・三重大等と産学連携での研究を行っている。
    今回は中部電力技術開発本部の大型環境実験棟と波浪水理実験棟の視察に伺った。
    大型環境実験棟では、低温~高温の任意の環境を作り出し、業務用空調機器のテストを行うことができる。自社の機器だけでなく他社製品のテストも代行している。ここでテストしている製品はヒートポンプ技術を活用しているものである。
    ヒートポンプは熱媒を用いて低温部分から高温部分へ熱を移動させる技術である。
    ヒートポンプは投入エネルギー以上の熱エネルギーを取り出すことが可能なところが省エネの観点で優れている。
    ヒートポンプはエアコンや冷蔵庫等身近に使われており、様々なメーカーの研鑽によって省エネ化している。
    波浪水理実験棟では、洋上をシミュレートでき、洋上風力発電の研究が行われている。
    洋上風力発電とは、その名の通り洋上における風力発電である。陸上と比べ風の環境がよく、周囲への騒音等の影響が小さいメリットがあげられる。しかし設置については陸上よりもコストがかかり難度も高い。水深が浅い箇所においては海底に基礎を直接設置する「着床式」、深い箇所においては浮体を基礎として係留する「浮体式」という分類がなされており、設置に関しても研究がなされている。
    波浪水理実験棟のプールの水深は3mであるが、風車や風速を縮小してシミュレートすることにより実物大の洋上風力発電の実験を行っている。
    メリットが大きいことから、今後各地の海域で洋上風力発電が行われていくことになる。
    今後さらに電気エネルギーの重要性は高まる。
    再生可能エネルギーは不安定ではあるが様々な方式での発電により安定性を高めることができる。
    静岡県は遠州灘等風力発電に適した海洋に面している。現在実動している洋上風力発電を調査し、付近の漁業関係者との調整や設置に向けた仕組み作りを行っていかなければならない。